コラム

AKIBA活動報告 2021/07 マルバツ表の呪い

コラム

こんにちは。株式会社kiwami 三鴨です。

すっかり、暑くなってきましたが。皆様いかがお過ごしでしょうか?

そういえば。オリンピックも始まりまして、テレビもオリパラ一色・・
始まってしまえばそれなりに盛り上がるものですね(笑)。

さて。今月は「真夏のホラー」です・・嘘です(汗)。
今回は、また、ややマーケ寄りな話題で。

というのも。最近、いくつかの仕事でプロダクト比較のマルバツ表を目にする奇怪・・・もとい、機会がございまして。以前から、これは一家言あるところなので、noteのネタとして良いタイミングなのではないかと思った次第です。いわゆる、マルバツ表っていうのは・・・

こんなやつで。昭和世代の僕の目から見ても「時代遅れ」という印象が拭えないストラクチャーだと思うのですが。未だ、しつこく生き残っているんだなぁと。某、東京芝浦の総合電機機器メーカーで昭和から働いていたぼくが個人的な見解でモノ申しますと・・これ・・・

あまりに非合理なので、そろそろやめませんか?

です。とても、雑な言い方をしてしまうと、こんなもので「何の比較にもならない」と言うのが、私見ではありまして。もし、ぼくが企業で決裁権を持つ立場にいて、部下からこの手のマルバツ表が出てきた時点で、事実から目を背けようとする何らかの意図か、部下から面倒くさいか?無能か?バカか?と思われているか、一旦そのへんを疑います。(笑)

なんで?という感じではあると思いますので。このストラクチャーが、なんの比較検討資料にもならない例を挙げます。何でもいいんですが。そうですね・・ハンバーグランチの比較表を書いてみましょう。

これで、一体何がわかるのやら?いや、むしろ・・なんも、分からなかった方がまし。これを見て、何らかの事実を狭い範囲で見てアホな上司やアホな役員がわかった気になってしまい「間違った判断を下す」ことが恐怖です。作為的に限定的な情報から間違った判断を引き出すためのメソッドにも見えます。

僕が某メーカに入社した頃、このマルバツ表の最盛期だった気がします。バブル期でもあったので、それなりのモノを作れば、そこそこ売れたという、平成世代の皆さんには足を向けて寝られない良い時代ではあったものの。一方では、メーカ間の競争は熾烈を極めており、非常に早いサイクルでの新製品のリリースも求められていた時代でした。

例えば、ワープロ(死語)やパソコンの新製品のリリーススピードがなんと3ヶ月に1回という非常識な速度で進み、エンジニアの残業代が平常時の月額賃金を軽く上回り、工場の駐車場にはBMWやベンツ、NSXなんていう高級車が並ぶものの、寮と工場の行ったり来たり、女の子とデートする暇も無く納期にヒーヒー喘いでいたというおかしな時代でもありました。

特に某芝ではワープロ、パソコン、携帯電話、ビデオ、テレビと・・影の主力商品であった半導体を大量消費することのできる製品をたくさん市場に出す必要があったわけですね。ザ・ムーアの法則、ザ・大企業。

で。件のマルバツ表に至るわけですが。熾烈な競争によりプロダクト開発が高速で進んで行った結果、あるところで開発すべきものの「頭打ち現象」が発生します。平たく言うと、ネタ切れです。

そこで。上司は言うわけです「他社との差別化が重要なんだ!」と。結果、生じるのはイノベーションではなく、一般のユーザには必要のない重箱の隅をつついたような、しょうもない機能の開発が進んでいきます。もはやそうなると、ユーザニーズというより、ただ開発体制を維持するためだけに企画開発が進んでいく事態になっていきます。はなっから、ユーザに使ってもらうために開発した機能ではないですから、ここで、件のマルバツ表が登場。

表の上の方は、大抵まともなことが書いてあるものの機能インフレを起こす下の方では相当怪しくなってくるわけです。おそらく、一般のユーザーが生涯使わないであろうマニアックなスペックが並び、自社はマル、他社はバツとなり。アホな上司や、自社の製品を触ろうともしない会社上層部は競合他社に勝った勝ったと喜ぶ・・いや喜んでる風を見せざるを得ないわけです(笑)。

余談で。これが起きる、もう1つの要因としてメーカの理論として、製品の値段を下げたくない事情と、VA(付加価値)をつけて同じ値段なら実質値下げと同じだろ?という理論に基づいて、売価を維持するためだけに不必要な開発を続ける必要があるわけです。特にソフトウェアは何万とコピーしても原材料費がかかるわけでは無いので、VAの格好のネタになるわけです。メーカの闇ですね。

思えば。スティーブさんが(たぶん)言いました、アホは足し算しかできない、クリエイターは引き算ができる、と。

かつて、アメリカで初代のiPhoneが登場する前後で情報は意外に早く伝わっていて、当時音楽プレイヤーとして不動の地位にいたiPodに電話がついただけ?だの、どうやらボタンが1個しかついてないらしいぞ?だの、という話題が流れたときに。日本の携帯電話屋さんはコゾって馬鹿にしたわけです。Apple・・恐るるに足らずと。

おお!わが社は圧倒的じゃないか(特にボタンの数)、みたいな。
結果は火を見るより明らかでしたね。

もっと、恐ろしい事に気づいたのですが・・・子供のためにハンバーグランチを決裁するお母さんは、おそらく、ハンバーグランチを口にすることがないという事実。要するに、お母さんは自分が間違った選択をしたという自覚を得ることがなく、反省もなく学習機会にもならない。

人がなにかを評価するとき、実際には自分の感性と直感を信じるしかないという教訓でした。教訓を生かさず、えせロジカルなマルバツ表が、未だに作られ続け。こういう誤ったプロセスを経て、企業にしょうもないシステムが導入されたり、しょうもないベンダー選定がなされる不条理は、昭和から平成、令和になっても呪いの様に続いているとは、げに恐ろしい話です。

かの、スティーブ・ジョブズは週末までに製品のプロトタイプを要求し、土日で家で徹底的にさわりまくり。月曜には大量の改善リストを出してきたと聞きます。(土日におくってこないところがスティーブさんの優しさだと思います)

もし。今後、似たようなマルバツ表を目にしたとき・・・皆様の脳内に、ふと、ハンバーグランチが浮かんだら・・ブロガー冥利につきる感じですかね。(笑)

さて。7月からこんなに暑いと・・8月には気温が60度超えますね・・というのは冗談として。このあいだ、日なたの温度が40度以上の日・・とある会社にお邪魔したところエントランスに置いてある体温検知器が僕の顔を写して38度あるやつがいる!とアラートを鳴らせまくってました。あの、ゲームのクリアの仕方が未だによくわかりません(笑)。

本当に暑いのと、コロナ患者も増えてますので。皆様もお体に気をつけてください。来月あたりは・・・都内の某大手スーパー様で取り組んでいる事例などもご紹介できたら?と。

では。引き続きよろしくお願いいたします。